猫が外から帰ってきたと思ったら、その口にはなんとネズミが。しかも得意げな顔をして見せに来る、あるいは、目が覚めたら枕元にネズミが置いてあったという経験を持っている方もいるのではないでしょうか。
猫がどうしてネズミを捕るのか、また飼い主にわざわざ見せにくるのはなぜなのか、さらに食べてしまった時の危険性や対処法をご紹介します。いざという時、慌てないようにしておきましょう。
この記事の目次
猫がネズミを捕まえる理由は?
なぜ猫はネズミを捕まえるのでしょうか。その理由には様々な説があります。
猫にある狩猟本能のため
猫には狩猟本能があります。猫を人間が猫を飼い始めたのも、その狩猟本能を利用することが理由でした。
大切な食糧である穀物を食べてしまうネズミを追い払うには、「穀物は食べずネズミは捕る」という猫の存在が必要だったのです。その歴史はなんと4千年も前にさかのぼります。
2016年には、アメリカシカゴで、ネズミの駆除に野良猫を利用したニュースがCNNで報道されています。
全米一の「ネズミ都市」シカゴ、駆除に野良猫が大活躍
母猫よりネズミは獲物と後天的に認識する
猫がネズミを捕まえる行動は、後天的と考えられています。母猫がネズミを捕ってきて、子猫に見せることで、子猫はネズミが獲物だと認識します。
それを教わらないと、ネズミを狩らない猫になる可能性があるのです。そのため子猫のころから、ネズミなどげっ歯類とともに生活している場合は、獲物として認識しないことがあります。
しかし、ネズミの細かな動きに猫が思わず反応する可能性はあります。ハムスターなどのげっ歯類を、猫と一緒に飼っている飼い主は注意しましょう。
猫がネズミを見せてくる理由は?
せっかく捕ってきたネズミを食べず、飼い主に見せにくることがあります。あの行動にはどういう理由があるのでしょうか。このことについては、様々な説があります。
飼い主に褒めてもらいたいから
猫が獲物であるネズミを持って帰ってくるのは、子猫に獲物を持ち帰る習性からくるものという説があります。飼い主を狩りもできない、体の大きな子猫と思っているため、ネズミを持ち帰っているという説です。
しかし、オス猫も持ち帰って飼い主に見せることを考えると、飼い主を子猫だと思って持ち帰るという行動では説明がつかない場合もあります。
そのため「こんな獲物を捕ってきた、すごいでしょ!」と飼い主に褒めてもらいたいという意識が働いているという説もあります。たしかに持って帰って見せる時は、どことなく得意げに見えます。
飼い主に元気になって貰いたいから
飼い主が体調不良や元気のない時に、獲物を持ってくることがあります。このことから飼い主の元気がないと、「栄養を付けさせなくては」と高タンパクの「ネズミ」を食べさせようと持って帰るという説もあります。
ネズミを食べた時の症状と対処法は?
病気や感染症の可能性
ネズミを食べると様々な病気や、感染症にかかるリスクが高くなります。
トキソプラズマ症
トキソプラズマ原虫が感染源です。トキソプラズマの「シスト」と呼ばれる殻のようなものを体内に持ったネズミを食べてしまうと、猫もトキソプラズマに感染してしまいます。
感染した猫の便をネズミが口にしてネズミが感染し、そのネズミを猫が食べて、また猫に感染と延々と感染を繰り返すことになります。
猫にはほとんど症状が見られず、あったとしても免疫力の弱い子猫が下痢をする程度です。人にもトキソプラズマは感染します。猫のトイレを掃除したあとは丹念に手を洗うようにしましょう。
エキノコックス症(多包条虫症)
エキノコックスというと北海道のキタキツネが有名ですが、旅行者や転居などの移動の増加にともない、北海道以外でも見られるようになっています。
エキノコックスに感染したネズミを食べると、猫も感染します。猫には特に強い症状がみられません。しかし何かのきっかけで、エキノコックスの虫卵が人の口に入ると人間も感染します。
回虫・条虫など
ネズミを食べることで、回虫や条虫(サナダムシ)に感染する危険性が高くなります。どちらも猫の栄養不良を招きます。その他回虫では下痢や便秘、条虫では下痢のほか嘔吐、貧血などがみられます。
ダニ
ネズミのほとんどに、ダニが寄生しています。そのネズミをもてあそんだり食べたりすると猫にも感染する可能性が高くなります。
食中毒の可能性
サルモネラ菌を持ったネズミを捕食すると、サルモネラ菌による食中毒になってしまうこともあります。嘔吐や下痢、発熱などの症状がみられますが、無症状のこともあるため注意が必要です。
また、殺鼠剤を食べたネズミを猫が食べると、猫も中毒になります。殺鼠剤に入っているクマリン系薬剤という成分は止血異常を招くため、重度の貧血になる危険性があります。
食べた場合は獣医へ相談を
猫がネズミを食べてしまった場合は、早めに獣医に相談しましょう。食べたところを見ていなくても、ネズミを齧ったあとなどがあった時も受診することをおすすめします。
ネズミを食べないための対策は?
感染の危険から猫を守るためにも、ネズミを食べない対策をとりましょう。
室内飼いを徹底する
外に出さないようにし、室内飼いを徹底します。狩りを防げるだけでなく、交通事故や他の猫とのけんかなどからも守ることができます。
また、狩猟本能を満たしてあげるように、家ではおもちゃでたくさん遊んであげることも大切です。
猫に鈴をつける
猫に狩りをやめさせるには、「狩りに下手になってもらう」という手があります。その一番良い方法が猫に鈴を付けることです。ネズミが家の中にいたとしても、鈴の音を聞いていち早く逃げ出してしまうでしょう。
ただ、小さな鈴1つ程度では、優秀なハンター猫なら音を立てない方法を身に着ける可能性もあります。念のため2つくらい付けておきましょう。
まとめ
ネズミを捕ってくる猫の姿は野生の本能をうかがわせ、とまどう飼い主も多くいます。もともと狩猟本能のある生き物ですから、むやみに叱ったり嫌がったりしないことが大切です。感染症などのリスクもあるため、ネズミ狩りをさせないよう、鈴をつけて室内飼いを徹底しましょう。
狩猟本能を満たすよう、たっぷりおもちゃで遊ぶことも大切です。万が一、ネズミを捕ってきて食べてしまった場合は獣医に相談してくださいね。